平成24年度卒業論文表彰

2013/3/30 土曜日 行事 | コメントは受け付けていません。 satoru @ 22:38:35

平成15年度から,経済学部の同窓会である「瑞山会」より,学業成績,資格取得,および卒業論文などにおいて優れた成績を収めた卒業生が表彰されています。

今年度の卒業論文表彰を受賞したのは,山本陽子ゼミの栗山実季さんの論文「医療費貯蓄口座の導入 -少子高齢化時代の医療制度改革-」でした。

栗山さんの卒業論文に対して指導教員の山本先生から、「この卒業論文では、日本における医療保険制度にシンガポールで導入されている医療費貯蓄口座(MSA)の制度を導入した場合の実行可能性について検証をおこなっています。
 日本の医療保険制度は、現役世代の保険料負担が大きく、世代間で保険料負担の格差が非常に大きいと言われています。また、今後の高齢化に伴い、医療費の大幅な増加が予測されています。日本の医療保険の財政は現時点においても厳しく、今後、医療保険制度の維持が危ぶまれております。シンガポールや米国の一部で採用されている医療費貯蓄口座(MSA)の制度は、個人単位で医療費を積み立てるという制度で、個人で積み立てた医療費を当該個人の医療費の支払いに当てるという仕組みです。個人勘定の制度であるため、世代間の保険料負担の不公平を回避し、また、医療機関を利用すればするほど当該個人の積立金が減少するため、安易な医療機関の利用による医療費の増大を抑制することができます。このように論文のテーマは現在、非常に緊急性が高い問題となっています。
栗山さんの論文では、医療費貯蓄口座(MSA)の制度を日本に導入した場合、個々人の積立金がいくらになるのか、現在の医療保険制度と比較して個人の負担はどのように変化するのか、医療費貯蓄口座(MSA)の積立金を支払うことは個々の家計において可能であるかなど、医療費貯蓄口座(MSA)の日本における実行可能性について多角的に検証をしています。検証方法は未熟な点もありますが、学部学生の利用可能なデータを可能な限り収集し、栗山さん自身で検証方法を考え、最終的に具体的な政策提言に結びつけたことは大変評価できると思います。医療費貯蓄口座(MSA)導入における個人の負担感、実際に医療費貯蓄口座(MSA)を導入する際の留意点については、丁寧に分析、考察されています。また、卒業論文を執筆するにあたり、シンガポール政府による公表資料を利用するなど、英語の資料にも意欲的取り組んでおりました。」と推薦されました。

最後に論文の要旨を紹介します。

医療費貯蓄口座の導入 -少子高齢化時代の医療制度改革-
                                         栗山実季
 日本の医療は、男性79.64歳、女性86.39歳という高い平均寿命を誇るなど、世界でもトップレベルであるが、国民医療費は増加の一途を辿っている。原因として、医療技術の進歩やコンビニ受診の増加、生活習慣病の増加など様々な要因があげられるが、特に少子高齢化は見過ごせない。老人医療費は若者の約5倍の費用がかかると言われており、将来的にも高齢者人口の増加に伴い、医療費は増大すると予測される。少子高齢化の時代に現行の賦課方式の医療保険制度を維持することは難しいと考え、これまでの日本の医療制度の転換をはかるべく、シンガポールや米国の一部でも導入されている医療費貯蓄口座制度(MSA=Medical Savings Account)について検討する。この制度は各々が口座に貯蓄をし、そこから自分自身の医療費を支払うもので、個人勘定の積立方式と言える。この制度の利点として、自分の医療費は自分で支払うため、世代間の保険料負担の不公平がなく、また無駄な受診を控えるなど医療費の抑制につながる点が挙げられる。これが上手く機能すれば、総医療費の減少や、高齢社会における若者世代の負担の軽減を図ることができる。
 医療費貯蓄口座の日本への導入を検討するにあたって、現行の日本の医療保険制度や医療費構造、そしてMSA制度を導入しているシンガポールの医療政策についてみた後、実際に日本にMSA制度を導入した場合の積立額の試算を行う。試算方法は、2010年の生涯医療費をもとに平均寿命83歳までの医療費を足し合わせ、ここに占める公費負担割合を変えながら、それぞれ年間積立額を計算した。今回は特に公費負担を50%にした場合の年間積立額について、現行の医療保険加入者の状況等と細かく比較した。その結果、試算した積立額では現在の各保険加入者の負担とさほど変わらなかったが、各保険者や公費から援助を受けている後期高齢者医療制度の加入者の負担は増えることが分かった。しかし、高齢者の多くは貯蓄をしていることから、貯蓄高の面からこの負担を検討すると、決して非現実的な負担であるとはいえないと分かった。
 MSA制度には疾病リスクや医療技術の進歩など様々な状況に合わせた積立額の試算や、高額医療費への対応、所得再分配機能の不備など留保しなければならない点はいくつかあるが、個々人が責任を持って医療費を貯蓄し、支払うため、高齢社会に対応でき、世代間の不公平を軽減することができる。また、医療費支出が少なかった場合には、残った貯蓄は自分の資産となるため、医療費を抑制するインセンティブにもなる。このような利点を考えれば、高齢者人口増加による医療費増大が見込まれる将来において、我が国に医療費貯蓄口座を導入することは大きな価値があるだろう。

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