平成23年度卒業論文表彰

2012/3/27 火曜日 行事 | コメントは受け付けていません。 satoru @ 22:50:09

平成15年度から,経済学部の同窓会である「瑞山会」より,学業成績,資格取得,および卒業論文などにおいて優れた成績を収めた卒業生が表彰されています。

今年度の卒業論文表彰を受賞したのは,小川ゼミの西脇美穂さんおよび濱口ゼミの古賀公剛さんの2編の論文でした。

西脇さんの卒業論文に対して指導教員の小川先生は、「当該論文は,企業分析手法を用いた事例研究である。まず,定性的分析として,経営戦略分析を行い,多角化の類型ごとに事業ポートフォリオについて検討している。次に,定量的分析として,合併前の2社および合併会社の収益性,労働生産性,および安全性を,各種の財務指標により分析している。最後に,売上高という代表的な収益指標を用いた推定計算により,合併しなかったと仮定したケースと合併した実際のケースとのシナリオ別比較分析を行っている。ゲームを扱うソフトウェア産業の特性や当該企業の特徴を踏まえて,合併により収益性が安定化・平準化し,成長性が高まっていることを抽出し,合併の正の効果は持続的であると結論づけている。当該事例の位置づけがかならずしも明瞭でないことや,分析方法が荒削りなところも散見されるが,合併の動機づけおよび効果を定量的に説明しようとする意欲的な姿勢が長所である」と推薦しています。

また、古賀公剛さんの卒業論文に対して指導教員の濱口先生は、「古賀公剛君は,カーネマン(ウィキペディア)とトベルスキー(ウィキペディア)によってに提唱されたプロスペクト理論を検証するために,名古屋市立大学経済学部の学生を用いてアンケート調査を行いました.彼の作成したアンケートは,プロスペクト理論を検証するための標準的なアンケート内容を踏襲しつつ,本学の学生が直感的に答えやすいように工夫されていました.アンケート結果は,ほぼ既存の研究結果を支持する結果であり,彼の調査方法が過去の結果を再現できたという意味で価値があることを示しています.この卒業論文を作成することによって,彼自身が興味を持って取り組んだプロスペクト理論に対する理解が深まったと思います.」と推薦しています。

それでは以下に,受賞論文2編の要旨を紹介します。


合併効果の分析
―スクウェア・エニックスの企業分析を通じて―

氏 名  西脇 美穂
指導教員 小川 淳平

【要旨】
本論文の目的は、株式会社スクウェア・エニックス(以下、SE社)の合併の目的を会計学および財務論の視点から明らかにし、合併により当該企業はどのように変化したのか、を推察することである。

一般に、ゲーム産業は事業上の不確実性が高く、非常に高い投資リスクと隣り合わせに成り立っており、生存競争に敗れた企業は瞬く間に姿を消す特性がある。SE社は、ゲーム産業に属する、ソフトウェア等を開発・販売する企業である。以前はスクウェア社とエニックス社という別の会社であり、主要ソフトウェアを発売するごとに激しい競争を続けていた。ところが2003年、この競争は「合併」という形で収束することになる。

そもそも合併した際は、プラスの効果を見込んでいたはずである。ただし、競争度の低下は、中・長期的には収益性や企業価値の減少をもたらすとも考えられる。そこで、SE社における合併の成否を判断するために、主に収益性に関して定量的に検証し、企業の提示する目標が達成されているかを分析することを目的とした。

企業分析の方法は、定性分析と定量分析から構成される。第1に、定性分析では、SE社が合併時に提唱していた4つの企業体制の強化の手法に関して、それが合併前と合併後でどのように変化し、またプラスに働いているかを推察した。結果として、どの手法においても合併による企業間の補完関係がみられ、プラスに働いていると推測された。また、SE社の経営戦略を3つあげたが、これをAnsoffの「企業戦略論」にまとめられている分類の定義に照らして分析し、成功と失敗の原因を推察した。

第2に、定量分析としてまず財務分析を行った。とりわけ収益性分析では、企業戦略にある「収益基盤の強化」という観点を検証し、合併前と比べて安定的な収益を得られるようになったことが推測された。次に、シナリオ別の比較分析として、合併以前の2社がそれぞれ合併せずに存続していたと仮定し、2003年までのデータから将来の売上高を予測した。予測値をSE社と比べることで、合併による変化を示した。また、同じ手法を用いてSE社に関して将来予測を立てた。売上高を用いた成長性予測というシンプルな推定により比較をしたところ、実際の売上高は予測値をさらに上回っていた。

以上より、SE社は合併したことで、より投資対象として魅力ある企業へと変化したと推定される。また、SE社が提示した合併目的も果たされているとの結論に達した。特に収益性が安定したこと、事業上の不確実性が低く抑えられていることなどは、SE社の企業としての強さを、顕著に示しているということを実証できたように思う。


不確実性下における人々の行動パターンの研究

氏 名  古賀 公剛
指導教員 濱口 泰代

【要旨】
 人はなぜ,それぞれ違った行動をとるのか?新古典経済学の世界では,経済学における人間像を,人間=ホモ・サピエンスにもじって,「ホモ・エコノミカス(合理的経済人)」と読んでいる.ここでいうホモ・エコノミカスには,大きく3つの仮定が存在する.1つ目は,自分にとって利用可能な膨大な量の情報を,あたかも高性能コンピュータのように完璧に処理し,経済活動の意思決定において最も望ましい答えを導き出すという「超合理的」であるという仮定.2つ目は.今後起こりうる事象や発生確率を熟知し,初めに決めた計画通りに,貯蓄や支出を実行するという「超自制的」という仮定.そして3つ目は,自分自身の効用のみに興味があり,他者の利益や公平感といった価値基準を持たないという「超利己的」という仮定である.しかし,このような特徴をもつホモ・エコノミカスは現実には存在しないのが実情である.人は情報を完璧に処理することはできないし,今後起こりうる事象の発生確率を熟知する事も無い.さらにボランティアや募金に代表されるように,他人の利益に対しても関心を持つのが,現実の人間というものである.

 本論文では,行動経済学におけるプロスペクト理論の考え方を用いて,人々の意思決定のパターンをアンケートによって検証した.アンケートでは,投資やギャンブルの状況において,人々のリスク態度がどのようであるかを調べた.その結果,人は損失を過大に評価してしまう傾向があり,フレーミング(質問の仕方)の違いによっても,意思決定に大きな変化が現れることが分かった.また,プロスペクト理論の確率ウェート関数の考え方を支持する 結果も得られた.これらのアンケート結果は,期待効用理論が人々の行動を説明しきれないことを示している.プロスペクト理論によって,期待効用理論では非合理的だとも思える人間の行動を,矛盾なく説明できることが分かった. 

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